『マノン・レスコー』アベ・プレヴォ

『マノン・レスコー』は、18世紀フランスの作家アベ・プレヴォ（Antoine François Prévost）によって1731年に発表された小説で、愛と欲望、社会の規範との葛藤を描いた悲劇的な物語です。原題は『Histoire du chevalier des Grieux et de Manon Lescaut』（デ・グリューとマノン・レスコーの物語）であり、若き騎士デ・グリューと彼の愛人マノンの波乱に満ちた愛の物語が描かれています。

あらすじ

物語の主人公は、若き騎士デ・グリューで、彼は修道士になることを望んでいました。しかし、運命的に出会った美しい少女マノン・レスコーに一目惚れし、彼の人生は一変します。マノンは美貌で多くの男性を魅了する女性であり、彼女自身も贅沢な生活を望んでいました。二人は互いに深く愛し合いながらも、欲望と道徳、社会の圧力の間で揺れ動くことになります。

マノンは裕福な生活に執着し、金銭的に困窮すると、他の男性から援助を受けることをためらいません。デ・グリューは彼女を愛し、何度も彼女を救おうとするものの、そのために自分の名誉や財産、さらには社会的地位をも犠牲にします。二人は一緒に逃亡を繰り返し、最終的にはアメリカへ移住しようとするも、マノンは過酷な運命に見舞われ、デ・グリューの腕の中で息絶えるという悲劇的な結末を迎えます。

テーマ

『マノン・レスコー』は、愛と道徳、欲望と破滅の間で揺れる人間の弱さを描いています。デ・グリューはマノンへの愛によって何度も堕落しながらも、彼女を見捨てることができません。マノンもまた、自身の欲望と贅沢な生活への執着によって破滅へと導かれます。彼らの愛は非常に純粋である一方で、世俗的な誘惑に勝てず、悲劇的な結末へと向かいます。

物語はまた、18世紀フランス社会における道徳観や階級差、女性の地位についての批判も含んでいます。マノンは魅力的な女性として多くの男性に利用される一方で、自らの欲望によって自由を追い求める人物としても描かれています。

文学的影響

『マノン・レスコー』は、フランス文学史において重要な位置を占める作品であり、多くの作家や芸術家に影響を与えました。オペラやバレエ、映画などでもこの物語は度々取り上げられ、特にジャコモ・プッチーニによるオペラ『マノン・レスコー』は非常に有名です。プレヴォの作品は、ロマン主義の先駆けともされ、後の文学に大きな影響を与えました。